日本経団連会長の米倉弘昌という人が、福島第一原発事故に対する補償問題について、マスコミでさかんに発言している。
そもそも、この事故は未だ現在進行形であり、今後どのように展開するか、予断を許さない状況にある。
何度も書くが、東電関係の現場作業員を始め、自衛隊・消防などの方々による決死の手当てのおかげで、原子炉格納容器の破壊といった最悪の事態を免れているのである。
日本経団連会長は、最悪の事態の一歩手前状態だった3月16日に、なんの根拠もなく事故は徐々に収束の方向に向かっていると述べ、「千年に1度の津波に耐えているのは素晴らしいこと。原子力行政はもっと胸を張るべきだ」とも言っていた。
この人が、今までの原子力行政を賛美していたことを記憶されたい。
4月7日になるとこの人は、東京電力は被災者の側面もあり、政府が東電を加害者扱いばかりするのはいかがかと言い始めた。
第一原発周辺の放射能によって避難を強いられた多くの人々が十分な手当てを受けられずに苦難の日々を送っており、放射能汚染によって農産物の出荷ができずに苦しんでいる農家や、風評被害によって農産物の販売に苦しむ膨大な農家があり、太平洋に流出した放射能汚染によって漁業ができなくなった人々が苦しんでいるさなかのことである。
ここでこの人が言いたかったのは、「異常に巨大な天災地変」の場合に限られる免責規定を初適用するなどして、東電の経営を支えるべきだということだ。
東電は津波の被害者なのだから、国民が納める税金で支えてやるべきだという話である。
そして昨日の会見でこの人は、もっと正直に本音を語り始めた。
「政府高官が東電に被災者に賠償金を払えと言ったと伝えられているが、これは政府の責任だ」「政治家が国有化という言葉を使っただけで、どれだけ東電の株価が下落したか」等々。
枝野官房長官は一貫して、第一義的には東京電力の責任だと言い続けている。日本経団連会長の言う「政府高官」とは枝野氏のことである。
市場経済において、東電の株価か下落したのは、あたりまえのことだ。
地震・津波によって深刻な事態が起きることを何度も、具体的に指摘され続けていたにもかかわらず、なんの対策を取らずに、この事故を招いた経営責任が、マーケットによって指摘されただけのことである。
株価の問題を言うなら、東京電力は長らく、「超優良株」と言われていた。
とするなら、東電株で多額の不労所得を得ていた輩にこそ、過去に得た配当金や売買益の全額を吐き出させるくらい、当然ではないだろうか。
事故が緊迫した状態だったときに「原子力行政はもっと胸を張るべきだ」と言った日本経団連会長は、今は、「東電が甘いのではなく、国が設定する安全基準が甘かった」と、事故を政府のせいにしようとしている。
東電の責任について、枝野さんは何度も言及しているが、社長も会長も、「申し訳ございません」と言うが、「東電に責任がある」とは決して言わない。
東電が、賠償を恐れているのは見え見えだ。
しかし今はまだ、補償を云々する時期でなく、事態への対処と救援に注力すべき時期だ。
カネはいくら使ってもよいから、事態を沈静化させるべきだし、避難者のケアには万全を期すべきで、国家の役目とは、そういうことだ。
以前にも書いたが、被害者の救援のためには、増税や公務員給与の引き下げも、甘受すべきだ。
東電は、かつてのチッソのように、補償のみを目的として存続させてもよい。
日本経団連あたりは、事故の尻拭いだけは国民にやらせて、みんなが忘れたころに,またまた東電株でひと儲けしようなどと、考えているんだろうが、孫正義とかとか柳井正とか三木谷浩史(実際に出したかどうか未確認)などなど、会社経営者とは、米倉弘昌みたいな阿呆ばかりではないということを証するような報道は、数多い。
こんな人物が役職についているようでは、日本経団連とは、よほどインチキな組織なんだろう。
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