楽山園

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楽山園


甘楽町・楽山園の池の鯉がこっちを見ていた。

(おれ) 信雄さん ?
(信雄) 霊感の強い男だな。
(信雄) いい庭だろう ? おれが作庭した。「知者は水を楽しみ、仁者は山を楽しむ」と言うてな、楽山園と名づけた。
(おれ) すてきな庭です。
(信雄) 水を引き込んで緩やかに流れる池を作り、里山を借景にして小さな浄土世界を作ってみたんだよ。
(信雄) 近所の百姓どもを呼んでな、ご馳走をふるまって、ここで能を見せてやるのよ。みんなえらく喜んでなぁ。酒飲むやつは好かんから、入れてやらん。
(おれ) 楽しそうですね。
(信雄) ああ、楽しい。
(おれ) 殿さまは100万石の大名だったんですよね。
(信雄) 東国はいらんから故郷の尾張をよこせと言ったのよ。そしたら猿めが、いきなりブチ切れおった。
(信雄) 領地は失ったけど、田舎で正直な百姓どもとバカ話するのは楽しいぞ。おれの前半生はいくさに明け暮れたが、苦しいことばかりだった。
(信雄) 父上(信長)も兄上(信忠)も猿めも従妹の茶々も秀頼も、家康どのも秀忠どのもみんな死んだ。おれはまだ、楽しく生きておる。彼らとおれと、どっちが幸せか、考えるまでもあるまいて。
(おれ) ごもっともです。
(信雄) 桜が咲くと一段ときれいだぞ。また来いよ。
(おれ) はい。ぜひ !

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