信州・高遠の五郎山へ。
明るい気持ちにはなれないのだが、五郎ちゃんは意外とさばさばしていた。
山頂にくすんだ色の赤とんぼが目をキョロキョロさせながら、こっちを見ていた。
(おれ) 五郎さん ?
(五郎) おう、よくわかったな。
(おれ) 歳とったもんで、最近敏感になった。長野県あたりじゃ相変わらず、あんたは人気の武将だよ。
(五郎) 長野県ちゃ、どこよ ?
(おれ) 今じゃ、信濃のことを長野県という。あんたほど立派な武将はいないといわれている。
(五郎) ほめてもらうぶんに悪い気はしないがな。いくさのあったあの日、兄上が新府から逃げるなんて知らなかったし、信君(義)兄が織田とツルンでたことも知らなかった。兄上を裏切るなんて考えられない以上、戦うしかなかった。
(おれ) 武将としての道を外さないでよかったな。
(五郎) 負けたのは悔しいが、いくさに勝ち負けはつきものだからなぁ。
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