根深誠『白神山地をゆく』(中公文庫)に、著者がクマ撃ちの「長さん」という人物と山を歩くという話があります。
その一節に、こんな言葉がありました。
長さんは、米と交換するための品物(クマのことー引用者)を求めながら、三十年近くの間、西津軽の山々を歩き回ってきた。ところが近年、山でなにを見て、なにを学んで心の糧とするか、ということが品物をとること以上に大切なことに思えてきたという。
これは、戦後日本の「アルピニスト」、百名山ハンター、釣り師その他山を歩くすべての人がかみしめるべき言葉ではないかと思います。
わたしもかつてNIFTY-Serveの会議室で、山歩きはスピードがすべてだなどとおっしゃる人に、浅学をも省みず、「山でなにを見たか、なにをしたかが大切ではないか」と述べた記憶があります。
「山を歩いて心の糧とする」。なんと含蓄のある言葉でしょう。
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