冬型なので、天気はよいのだが、寒気が強いと、ちぎれた雪雲から風花が飛んで来ることもある。
そういう時にはだいたい、西のほうほど降雪量が多い。
こういう降雪は風花という。
風花が舞うのは、脊梁山脈より太平洋側だから、おそらく日本海側で、この言葉は使われないのではないかと思う。
書いてあったのは『この国のすがたと歴史』だったと思ったが、英語圏では蝶のことを概ね「butterfly」としか呼ばないらしい。
日本列島の住民なら、「蝶が飛ぶ」というより、「アゲハが飛ぶ」とか「オオムラサキが飛ぶ」と言うだろう。
認識を表象化したものがコトバである。
コトバが貧困だということは、認識が貧困だということである。
認識が貧困だというのは、人間が低レベルだということではない。
複雑な認識を必要としないほど、現実が複雑でないということなのである。
この列島は、極めて複雑で、多様な生物相をもっている。
それが日本列島なのである。
そのことが理解できないのでは、日本列島について何もわかっていないと同じだ。
「風花」と「雪」を、欧米人なら「snow」としか表現できないだろう。
欧米人が自然に関し、日本列島の民より無知なのは、理由のあることである。
この列島で暮らすには、その土地その土地の土壌・気温・日照・風向きと風の質などに最も適したやり方を、数千年にわたって試行錯誤してこなければならなかった。
秩父という山間の一地方であっても、自宅周辺と車で10分ほどのところにある畑とでは、種まき時期を数日、ずらさなければ失敗する。
東西に伸びる谷なら、日照時間が確保できるが、南北に長い谷では日照時間が極端に少なくなる。
東西方向の谷であれば、ナスを作ることもできるが、南北に長い谷ではナスを作ってもうまくいかないから、インゲンを作ったほうがよい。
この列島に、どこでも同じように通用するマニュアルなど、存在しない。
単純な生物相・単調な環境のもとでなら、手をかけず、機械や薬剤の力に頼って農作物を作ることができるのだろう。
手をかけないことが、どうして「強い農業」であるのか。
ただ単に、安上がりなだけじゃないというなら、説明してほしい。
環太平洋パートナーシップ協定に参加するというのは、職人仕事に近い列島の農業をバカでもやれる欧米並みの農業にレベルダウンさせようという話である。
どうして、数千年かけて築いてきた知識をかなぐり捨てて、バカにならねばならないのか、理解できない。
富士嶽山山行記を追加。
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