野口正士『石碑が語る秩父事件』

 秩父事件関係の石碑・墓石を調べた記録。

 秩父事件関係の石碑は概ね把握しているつもりである。
 事件を暴動と呼ぶ立場のものは比較的少なく、多くは、秩父事件の顕彰が進んできて以降に建立されたものである。

 石碑に刻まれた文は、消えにくい。
 だから建立者は、慎重に撰文するのだろうが、それでも本文は、建立された時代を反映せざるを得ない。

 石碑を見るとき、その歴史的な意義と限界を踏まえる必要があるのは、そのためである。

 本書は、主観的な記述をなるべく控えて、石碑の本文と最低限の補足的記述を淡々と記している。
 秩父事件関係の石碑については、基本的文献になりうると思われる。

 惜しいことに、校正ミスが目立つ。
 ネット情報と異なり、印刷物もまた、紙の碑だから、慎重に記述する必要があろう。

(2500円 2014,11 私家版 2015,2,5 読了)