堤未果『アメリカから自由が消える』

 中国やロシアのように誰もが独裁国家と認めている国ならいざしらず、自由な国家の代表といわれるアメリカにおいて、内心の自由がどのような状態に置かれているかを示唆している。

 個人を識別する複数のタグを紐付けしデータベース化することで、人間をプロファイリングすることが容易にできるようになったのは1990年代だったかと思われる。
 権力が個人のデータベースを手に入れれば、国家による国民管理はほぼ完成したと言える。

 ネット通信・SNS・電話の盗聴は、すでに合法化されている。
 本読書ノートが権力側にモニタリングされている可能性も否定できない。
 『1984年』を想起するまでもなく、権力が最も恐れるのは「知」と「論」にほかならない。

 ネット世論が権力によって誘導されていると感じたのは2000年代に入ってしばらくのころだった。
 権力のどこかに、ヤフコメやブログ・SNSでまっとうな「論」や「知」を揶揄しデマを流す担当部署が存在すると感じた。
 ネトウヨは、彼らによって育成された自己愚民化ツールである。

 日本におけるメディア支配は、アメリカの比ではなく、完成している。
 これも、強力な愚民化ツールである。

 愚民化の進展によって、ターゲットが絞り込まれて、弾圧しやすくなる。
 権力が個人を否定したとき、愚民化された人々は権力ではなく個人を攻撃する。
 SNSなどのネットツールは、個人と個人を結びつける紐帯ではなく、匿名の何者かが自立した個人を孤立させ、追い込む道具と化す。

 アメリカや「日本」の人権は現在、崖っぷちに立っている。

(ISBN978-4-594-97740-2 C0295 \850E 2017,7 扶桑社新書 2021,6,22 読了)