秋嶋亮『北朝鮮のミサイルはなぜ日本に落ちないのか』

 「日本」とは、世界を支配する多国籍資本が民衆を馴化しつつ、富を吸い上げるシステムが稼働する現場であると述べ、なかでも「北朝鮮のミサイル」とは、多国籍資本によるヤラセであると主張している。

 前首相の安倍晋三氏は、「北朝鮮のミサイルが、日本の人口の少ない場所に着弾してくれればありがたい」と何度も述べていた。
 これを暴露したのは蓮池透氏だが、それが事実なら安倍氏は、自国民へのミサイル攻撃を北朝鮮に要求していたことになる。

 北朝鮮ミサイルヤラセ説は、メディアにおいてほとんど相手にされていないと思われるが、安倍氏の言動を見れば、著者の主張は妄想でなく、真実だと言わざるを得ない。

 自分に世界を洞察する能力があるとは毛頭思っていないが、いまの権力者たちの行動は、あまりに愚かであとさきを何も考えていないと見える。
 言うことは、子ども以下の言い訳・屁理屈に過ぎず、まともな大人なら、恥ずかしくて口にできないレベルである。
 それでも権力者の地位に居座ることが可能になるから、恥ずかしくて口にできないレベルの言説を、得意げに語ったりする。

 著者によれば、権力者たちは多国籍資本の操り人形に過ぎないから、愚かであればあるほど都合がよい。
 現実に憤りを持つ国民は権力者たちを批判し、権力者たちを更迭しようとするが、彼らはしょせん操り人形なので、トップが交代したからといって、権力構造になんの変化があるわけでもない。

 野党もまた、権力者たちを批判して、国民の意志を代弁しているかのような素振りを見せる。
 しかし野党が、多国籍資本の本質を暴いたり独立国家にふさわしい権力へ組み替えようとすることは決してなく、国民の批判を吸収する、国家の安全装置でしかないと著者はいう。

 与党・野党が多国籍資本に踊らされて権力ゲームに勤しみ、自滅へと進むのは勝手だが、彼らによって国土そのものが破壊されてしまえば、地球上でもっとも美しく暮らしやすいこの列島が、人の暮らしに適さない島へと毀損される。
 それだけは阻止したい。

(ISBN978-4-907872-24-3 C0036 \1700E 2018,6 白馬社 2021,2,10 読了)