オーウェル『動物農場』

 ソビエト連邦をモデルにした寓話小説。

 あまりにリアルすぎて、寓話として成功しているかは疑問だ。

 動物たちのリーダーだった老豚のメージャーは革命が起きる直前に死に、革命そのものは、若豚のスノーボールとナポレオンによって遂行される。
 メージャーは、無慈悲な人間による支配から動物たちを解放する革命の精神を体現する存在であり、革命が遂行された時点では、彼の面影も革命の精神も生きていた。

 革命が成就したあとは、スノーボールとナポレオンによる二頭政治が実現するが、ヘゲモニーを握っているのはどちらかといえば指導力にまさるスノーボールで、人間による反革命の襲撃に際し、身を挺して闘ったのもスノーボールだった。
 ところが、犬を使ったナポレオンによるクーデターが成功し、スノーボールは追放されてナポレオンが奪権に成功する。
 ここで、ナポレオンがスターリンで、スノーボールがトロツキーだということが、読者にわかってくる。

 ナポレオンは側近のスクィーラーを駆使して動物たちを騙し、デマと謀略によって恐怖政治を作り上げ、敵である人間と馴れ合い、取り引きするようになって、自ら特権階級化していく。

 ナポレオンらは、ついに二本足で歩き、服を着て、美食して酒を飲む動物と化す。

 このように、スターリンとその側近らがファシストと化し、ソビエトが社会主義とは無縁の独裁国家・全体主義国家・収容所列島と化していった状況が戯画化されている。

 第二次大戦後に書かれた小説だが、20世紀の社会主義国家の正体をリアルに描き出している。
 最初に述べたように、小説としてはひねりが足りない感じがした。

(2014,9 Kindle本 2020,12,16 読了)