野地秩嘉『サービスの達人たち』

 サービスをするのだから、この本に登場するのはお店で働く人々である。

 これでもかというおもてなしの話かと思ったが、必ずしもそうでなかった。
 サービスに関してであれ、超人的な働きを見せられても、すごいとは思うが、それ以上の感想は持てない。

 この本に出てくる人々の本当にすごいところは、相手に対する十分なリスペクトを欠かさないところだろう。
 だからこれらの人々のサービスは過剰にはならず、相手の選択を尊重する。
 中に、お客の注文を否定してこっちを注文せよと強いるウェイターさんが一人出てくるが、こういう人は勘弁してほしいと思う。

 要は、相手の望むところをはっきりさせ、相手の望むようなサービスを多すぎず少なすぎず提供できるのが、サービスの達人なんだろう。
 そのために必要なのが、自分が提供するサービスについての深い知識・技術なのは言うまでもない。

(ISBN978-4-10-136254-0 C0195 \520E 2019,6 新潮文庫 2020,12,8 読了)