佐高信・浜矩子『どアホミクスの正体』

 ここ数年の財政と金融政策の本質をえぐり出そうとする対談。

 前半は、アベノミクス批判に力が入りすぎていて、自分としてはあまり消化できなかった。
 こっちは素人なのだから、アベノミクスがいかにダメかを強調するより、本来あるべき財政と金融政策について、もう少しわかりやすくかみ砕いてもらえるとよかった。

 後半の議論の基調は、財政・金融政策はなんのために存在するのかという原論的な話が、けっこう胸に落ちた。
 例えば浜氏は、グローバル化とは本来、国家の中に封じ込められていた地域共同体や個人が全面に出て生きやすくなることであるべきだと述べている。
 国境がカオス化するのだから、それが当然なのにいつの間にか、多国籍企業の支配力が世界全体を覆うことを意味するようになり、人々を縛る政治的・心理的な国家の枠組みはむしろ、強化されている。

 これも浜氏の言葉だが、経済合理性の本源的意味は基本的人権を侵害しないということで、その点で、マルクスもアダム・スミスも同様の立場だという。
 これは、経済学において議論を交わす土俵となるべき前提である。
 ここを飛ばして共通のプラットフォームなしで議論を始めたのでは、話がかみ合わうわけがない。

 企業ガバナンスや労働の価値をめぐる議論も結局、その点が曖昧なままだと、現場の人々にしわ寄せが行って、命を奪われる人々が出てきてしまう。
 経済学者・企業・政治は、なんのための経済なのか、しっかり確認してから議論を始めてほしい。

(ISBN978-4-06-272977-2 C0231 \840E 2016,12 講談社+a新書 2020,11,16 読了)