取材班『「満州国」ラストエンペラー』

 「満州国」執政・愛新覚羅溥儀の通訳を務めた林出賢次郎氏が残した溥儀と関東軍要人らとの会見記録をもとに、「満州国」の実態に迫っている。

 溥儀は皇帝としての復活を強く望んでいたから、「日本」による「満州国」への誘惑に乗った。
 天津から満州へ脱出し、皇帝ではなく執政として名ばかりの元首に就任した後の溥儀は、関東軍の傀儡として生きることになる。
 のちに名ばかりの皇帝になっても、実態に変わりはなく、溥儀は自己の地位と引き換えに満州を売ったと言われても仕方がない。

 林出氏は執政・皇帝時代の溥儀に忠実に仕えた通訳であり、氏と溥儀の間には職務上の強い信頼関係があったと思われる。
 このような貴重な記録を残すことができたのは、溥儀への敬愛の情があったからだろう。

(ISBN978-4-02-262000-2 C0195 \740E 1995,8 角川文庫 2020,6,15 読了)