五味文彦『日本の中世を歩く』

 中世社会の景観を現在に見る紀行。

 列島各地域の景観は、大都市を除けば、中世と大きく変わっていないはずである。
 中世人の心情がいかなるものだったかを追体験する一つの方法として、フィールドワークがあり得る。
 ただ、いま展開する景観のどこが中世的なのかは、ガイドがないとわからない。

 人が用意に殺され、餓死・病死する時代に生きた中世人は、生き抜くことにかけて現代人よりずっとエネルギッシュでなければならせなかっただろう。
 一方で、星の動きに過剰と見える反応をしたり、神仏の意志を無条件で信じるのも、中世人だった。

 さほど多くない中世遺構からそのような心持ちを読み取るのは、面白そうだ。

 本書の紹介されている中で訪れたのは、鎌倉・平泉・宇治・熊野あたりである。
 この(2018)夏に訪れた伯耆国三仏寺投入堂なども、中世らしい景観である。
 歴史的な視角から、そこここで見る景観を見直してみたい。

(ISBN978-4-00-431180-5 C0221 \700E 2009,3 岩波新書 2018,9,1 読了)