五味文彦『中世社会のはじまり』

 平安時代から鎌倉時代にかけての、文化を中心とした通史。
 教科書的にまとまっていてわかりやすい。

 前近代史の社会の変化を理解するのは難しいので、人物を通して歴史を学ぶというのは理にかなっている。
 要は、どのような人物をどのようにとりあげるかだろう。

 この時代を象徴する人物として、埼玉県北部の子どもたちが学ぶことを前提とすれば、熊谷直実と畠山重忠がいる。

 武士政権を成立させた中核部隊は、源頼朝のもとに結集した無数の在地武士たちだった。
 彼らの心性がいかなるものだったのかを理解できれば、武士政権の本質がわかるはずである。

 幕府成立後も重だった御家人だった重忠も典型的な人物だが、子どもたちにとって、弱小武士ではあるが、平家家物語でのエピソードにこと欠かない直実の方がよりわかりやすい。

 本書に登場するのは多く、頂点的な人物たちであるが、政治史も大事だから、これらの人物を深く知ることにも、意味がある。

 北条政子や源実朝も面白いが、本書に取り上げられている後白河院・後鳥羽院・中世初期の頂点的な僧たちについても、その時代性と個性を教材化してみたい。

(ISBN978-4-00-431579-7 C0221 \820E 2016,1 岩波新書 2018,8,12 読了)