R・P・ゲイル他『チェルノブィリ(上下)』

 チェルノブィリ原発の事故直後から骨髄移植手術に携わったアメリカ人医師の手記。

 放射線に被曝すると、遺伝子が破壊される。

 破壊された遺伝子が自己修復できなければ、細胞は暴走し始め、ガン化する。

 造血細胞がガン化した場合、正常な細胞を外部から移植する骨髄移植以外に、治療法はない。

 以上が自分の認識である。

 著者のソ連入りは事故の起きた1986年4月26日からわずか6日後の5月2日だった。
 レーニンの知遇を得ていたといわれる政商アーマンド・ハマーの口利きだっとはいえ、電光石火として言いようがない。

 著者はその後、被曝医療の権威となり、3.11直後に来日しているが、その発言自体は、「原子力ムラ」の人々と大同小異に見える。

 本書の後半3分の1ほどは、原発及び核戦争についての、著者の見解である。

 著者はここで、原発運転員の不注意や資質不足による事故や、テロによる事故の可能性に言及している。
 理性的に演繹するならば、著者の結論は原発廃止に至りそうなものだが、現在の著者は、そのように考えてはおられないようだ。

(上巻 ISBN4-00-430050-9 C0298 \520E 1988,12 岩波新書 2013,9,5 読了)
(下巻 ISBN4-00-430051-7 C0298 \520E 1988,12 岩波新書 2013,9,5 読了)