利根川裕『喜屋武マリーの青春』

 ロックシンガー喜屋武マリー(現Marie)の半生を描いた評伝。

 Marieの評伝というより、もと夫である喜屋武幸雄氏とMarieの評伝といってよい。

 底本となった南想社本が1988年刊行だから、古い本である。

 しかし、Marieのブログ(Asian Rose Marie)上での自伝は2013年8月現在、ストップしたままだから、本書が大きく訂正されなければならない状況ではない。

 本書によって得られた知見の一つは、戦後の沖縄が体験したような苦しみの中で、美しくバワフルな音楽が生まれたのだということだ。
 沖縄の苦しみはあるべきでなかったが、そこから生み出された音楽の価値は貴いと思う。

 本書は、沖縄のロックは、ベトナム戦争によって生まれ、ベトナム戦争によって磨かれたと評価している。
 それも正しいと思う。

 人間とは、たいした存在なのである。

(ISBN4-480-02173-6 C0195 \400E 1988,1 ちくま文庫 2013,8,31 読了)