国際雑穀食フォーラム『雑穀が未来をつくる』

 雑穀食に関するシンポジウム記録。

 従って、問題を深く掘り下げた本ではない。

 かつて、中学か高校の地理の教科書に、「緑の革命」とという項目があった。

 優良品種を使い、適切に管理することによって、収量を飛躍的に向上することが可能であり、それによって食糧問題が解決できるという趣旨の記述だったと記憶する。

 今になって思えば、それは、農業分野におけるグローバル化のハシリだった。

 優良品種が「優良」かどうかは、実験圃場における実験結果だけでは判断できない。
 「優良」の基準を、その土地の気候や日照や土質にどれだけ適合しているかに設定すれば、「やってみなければわからない」ことがわかるだろう。

 現在、「優良」品種とは、大手種苗メーカーや農薬メーカーが推奨する品種だということが、明らかになりつつある。

 実際によい品種とは結局、その土地ごとに選抜・改善を重ねて現在に至ったものをいうのである。
 それは、グローバルとは対極に位置する、ローカルな存在である。
 「優良」品種は、規格化に適合せず、大量生産も不可能なものなのだと、現在のところ、考えている。

 人類の食を長らく支えてきた雑穀は、コメ・麦・トウモロコシによって駆逐され、「先進」国では、絶滅に近い状態である。
 コメ・麦・トウモロコシが優れた穀物だということは論を待たないが、雑穀もまた優れた穀物である。

 本書で、縷々述べられている雑穀の長所は、納得のできるものである。
 それはなにより、持続可能な社会の「食」である。

 コメ・麦・トウモロコシの改良も大切だが、危機に瀕している雑穀栽培を維持することが、

(ISBN4-88340-100-6 C0061 \2000E 2001,5 創森社 2013,3,21 読了)