高橋徹『明石原人の発見』

 考古学者・直良信夫氏が存命中に書かれた氏の伝記。

 だから直良氏の自伝である『学問への情熱』は、ずいぶん以前に読んでいた。

 『学問への情熱』は、直良氏が自分の人生を語るというより、自身の調査・研究によって何を明らかにしてきたかを周辺事情を交えながら綴っているという印象があった。
 自分を語るというのは簡単なことではない。

 直良氏の生き方は、学問を学ぶものに大いなる勇気を与えてくれる。
 学歴がなくても、ひたすら学び、調べ、考察すればきっと、きわめて大きなことを明らかにできるのである。

 旧石器時代の日本列島に関しては、以前と比べれば、はるかにリアルなイメージが得られている。
 明石原人の時代は、その時代よりもさらに古い時代だと思われる。

 かつて秩父でとんだ食わせ者が現れて、旧石器時代への興味を失わせた。
 しかし、この列島とはどういうところなのかという問題は、たいへん興味深いテーマであることに変わりはない。
 直良氏が旧石器時代史研究に登場されたのが、やや早すぎたといえなくもないが、若い人々には、氏の研究や人生について、知ってほしいと思う。

(480円 1984,1 教養文庫 2012,12,26読了)