佐高信編『日本国憲法の逆襲』

 メディアは、アメリカの開戦ムードをあおり立てています。
 アメリカ人が、復讐に燃える気持ちは、わからないではないけれど、復讐の相手も、どうすれば復讐が成立するのかも、復讐が妥当であるかどうかも、ちっとも明確ではないのです。


 さらに、その復讐の結果、何が残るのかも、冷静に検討されたとは思えません。

 憎むべきテロの首謀者を逮捕するには、どうすればいいのか。
 こうしたテロを防止するための、ハード面・ソフト面での、どのような努力が必要なのか。
 そういうことについての議論が、吹っ飛んでしまっています。

 政府筋のコメントを無批判にたれ流すメディアと、戦争熱をあおって回る「評論家」「解説者」なる無責任なアジテーターが、電波を占領しています。
 戦争とは、このようにして起こされるものなのだなぁ、と思います。
 そして、いったん起きた戦争は、なりゆきのままに、泥沼化し、飛び火し、自分は傍観者だと思っていた人びとにも、降りかかってくるものなのです。

 日本国憲法を、しっかり読まなくてはいけません。
 憲法の文言に、どういう意味が包含されているのか、じっくり味わって読まなくてはいけません。

 たとえばこの本には、憲法の読み方のヒントが、たくさん散りばめられています。
 第9条については、ダクラス=ラミスさんの「考える勇気が一番必要だ」という言葉がとても重いということが、こういう情況だからこそ、ことさら痛切に感じられます。

(ISBN4-00-001768-3 C0036 \1400E 2001,3 岩波書店 2001,9,18 読了)