天野礼子編『21世紀の河川思想』

 この本には、河川問題についての、日本と世界の理論家の議論のエッセンスがつまっています。
 最近、川と文化ということについて、少し考えました。


 少し前まで、秩父地方でも、人々の生活と荒川とは、切っても切れない関係にあったということをkurooの部屋の1997夏号に出ているご老人からうかがいました。

 秩父神社の夏祭りで、ミコシをかついだまま荒川に突入するというのを体験して、ますますそう感じました。

 今、だれが川を必要としているのでしょうか。

 水を必要としている人はいます。
 しかし、水と川とはちがいます。

 水とは、ひとつの物質にすぎません。
 川は、生き物です。

 かつて、人々の暮らしと切り離しては考えられなかった荒川は、今、なんの役に立っているのでしょう。
 鮎釣りと、ライン下り、カヌーイストの川下りくらいでしょうか。

 でも、なんの役にも立たないものは、必要ないものなのでしょうか。
 冷静に歴史をさかのぼれば、川を役に立たなくしたのはだれなのか、わかるはずですね。

 21世紀には、川をめぐる文化を復権させたいです。
 そうすることが、日本という国を永続させることだということに、気づく必要があります。

 釣り人が、竿を手にしているときと同じ、真剣なまなざしで川を見続ければ、その方向が見えてくると信じています。

 日本の川はどうあるべきか。
 世界の川は今、どうなっているか。
 この本には、あらゆるヒントが詰まっています。

 あとは、政官業のダムマフィア・トライアングルをいかにして突きくずすかでしょうね。

(ISBN4-7641-0382-6 C0036 \1800E 1997,4 共同通信社刊 1997,8,20読了)