マンネンタケ酒
マンネンタケ酒
マンネンタケ

 マンネンタケ(マゴジャクシ)は、夏のきのこのようです。

 ある夏、お気に入りの奥秩父の渓流で、三日間遊ばせてもらいました。
 いずれも気のおけない、楽しい仲間と同行しましたので、雷雨による増水などのピンチもありましたが、とても充実した釣行でした。

 渓に向かう、いつもの登山道に、マンネンタケがいくつか、出ていました。
 このあたりは、原生林なので、ツガの倒木に出たツガノマンネンタケなら見たことがありますが、普通のマゴジャクシを見たのは、初めてでした。

 マンネンタケ類には、虫が入りやすいらしく、今までとったマンネンタケをザックに入れてしばらく持ち歩くと必ず、虫だらけになってしまいましたので、今回は、帰りに採取して、帰宅と同時に、酒に漬け込みました。

 約1年半たって、あけてみたところ、ほとんど無色に近い黄褐色の、美しく澄んだ酒に仕上がっていました。

 ほのかに甘く、快い薬臭を帯びた、濃厚な味。
 この不思議な甘さは、どこから来るのでしょう。

 夏の深山の渓流に漂う、あの、甘い香りと、相通ずる、不思議な香り。
 いく度通っても、いろんな顔を見せて、訪れる人を魅了してくれる、奥秩父の渓流。

 この渓が永遠に、この姿でいてほしいと願いながら、小さなリキュールグラスを飲み干しました。