シラタマノキ酒

シラタマノキ

浅間山周辺にて

 たぶんご存じだと思いますが、比較的日当たりのよい森林限界下の砂礫地などで初秋から白い実をつけるツツジ科の植物です。
 花はちっともめだちません。この実を摘んでつぶすとサロメチールのにおいがするので、まあこれを食べる人も少ないだろうと思います。

 それではシラタマノキの実をホワイトリカーにつけておくとどうなるか?
 さきほどあけたのは1991年、浅間連峰・黒斑山産のシラタマノキ酒です。

 色は意外なことに美しく澄んだ濃い琥珀色(リキュールの魅力の半分は色にこそあります。かならず無色透明のガラスの器で飲むこと)。
 味はシラタマノキ特有のほのかに野性味を帯びたサロメチール味。

 梅酒やガマズミ酒こそが果実酒だという通俗的な観念を打ち破る、大胆不敵な発想の不思議な酒に仕上がっていました。
 作ったのはわずか300CC。
 これでいいのです。

 これをなめていると、舌のむこうから、どでーんと大きかった浅間山の姿や、シラビソのヤブの中で見つけたカノシタを油炒めにして食べたことまでよみがえってきました。