ツルリンドウ酒


2000,11,8 阿武隈・佳老山にて

 冬枯れの道で、目を楽しませてくれるものに、ツルリンドウの赤紫色の実がある。

 こちらは、サルトリイバラと違って、里山でだけ見るとは限らない。
 晩秋から春にかけて、里山といわず、奥山といわず、見る機会は多いのだが、見つけたとしても一つか二つで、ツルリンドウがじゃんじゃら生(な)っているのはあまり見たことがない。

 それを見たのは、琵琶湖にほど近い、とある低山だった。

 林道によって寸断された登山道を、迷いながら登って下山途中、道ばたに見たことがないほど大量のツルリンドウが実っていた。

 リンドウの仲間にしては、花は地味だが、実の色はとても鮮やかで、一目でわかる。

 これを酒にするとどうなるか。

 漬けこみ当初は、鮮やかな赤紫が浸出したが、1年熟成させると、型どおりの琥珀色に結晶。

 野草特有のきつい苦味がほどよく快感である一方、渋みはほとんどなし。
 少量の酒がのどを通過すると、花の酒に似た芳香が、鼻に残る。
 この芳香が、ツルリンドウらしさのようだ。

 以前は、どこの里山でもツルリンドウの美しい実が、見られたのだろうか。