アキグミ酒
アキグミ

長瀞にて

 秋の長瀞・岩畳には、哀愁が漂う。
 今年も、うなぎは、釣れなかったのだ。

 だいたい、いつも巨大ドバミミズを採取している観光道路の側溝が、きれいに掃除されちゃってたので、思わずのけぞってしまった。
 ヤマカガシほどの大きさの、太いドバミミズが、できればほしい。
 掘り出すとピョンピョン跳ねるような、ちっちゃいのでは、釣りにならないのだ。

 だから、夜の釣り場に着いただけで、もう戦意喪失。
 酒でも飲みながら、むなしく時を過ごすしかないのだ。

 観光客もまばらな、秋の長瀞には、アキグミがそこここに、実をつけている。
 きれいな花ではないので、どんどん刈られて、最近は少なくなってしまった。

 アキグミのちっぽけな実を摘むのは、根気がいる。
 まして、食ってうまいものでもないから、たいへん面倒だ。

 ここにあるのは、昨年、哀愁の長瀞で摘んだアキグミを酒に漬けたもの。
 明るい褐色の、きれいな酒になった。
 ビックリグミに似た味だが、酸味と渋みが、もっと太くてしっかりしている。
 もとの実にはない甘みも、どこからか浸出して、ほどよい味になっていた。
 野生というのは、このようにバランスのとれた味なのだなぁ、と感心。

 来年こそは、うなぎが釣れるだろうか・・・。