アケビのわた酒
アケビの花(花は春に咲く)

大きいのが雌花で小さいのが雄花

 ずっと前に、アケビで果実酒作りを試みたことがあります。
 そのときは、果肉とわたとを一緒くたに漬けこんだら、珍妙かつおいしくない酒になってしまいました。

 そこで、今度は、果肉とわたとを別々に漬けてみました。

 このアケビは、ミツバアケビ。
 アケビといえば、子どものころに、甘いわたを口に含み、種を吹き飛ばした想い出をお持ちの方が多いと思います。
 子どもにとっては、野にある果実の中で、アケビのわたほど強烈に甘いものはありません。
 アケビの思い出は、甘さの思い出です。

 それを酒にしたのですから、その味たるや、推して知るべし。
 美しく澄んだ黄色い酒に、アケビのわたの真骨頂である、甘みが結晶していました。
 これほどに甘い果実酒は、初めてです。

 しかし、この酒は、甘みだけではありません。
 おそらくは、あの黒くて小さい無数の種子から浸出する、不思議な滋味と香りが加わって、えもいわれぬ高貴さをかもし出しています。

 これぞリキュールの神髄ではないかと思いつつ、グラスを傾けました。