意外なものが、けっこういい酒になることを改めて発見したのが、さっきあけたクズ花酒だ。
近所の空き地には、まるでジャングルのようにクズが繁茂している。こいつは、ツルの先が地面にふれると、そこから根を出して、しっかり根づいてしまう。いったん根づいたら、そこをベースにして、次なるベースを開拓すべく、四方にツルを伸ばす。しかも、ツルの伸びるスピードたるやすさまじい。
どちらかといえば、クズの生命力には迷惑しているのだが、花はなかなか美しいのだ。色は鮮やかなアメジスト、フジの花をさかさにしたようなかたち。
この花を摘んで、酒にする。
幾重にも注意すべきは、花にもぐり込んでいる、まるっちいカメムシだ。
やつらを酒に漬けこんだら、目もあてられないから、厳重にチェックする。
クズの花は、下の方から順に咲いていくから、上の方が咲き始める前に摘んでこなくてはいけない。
花の酒の場合、水で洗うわけにいかないから、排気ガスや土ぼこりで汚染されている可能性のあるものは、はじめからだめ。
清浄なクズ花を摘んですぐにホワイトリカーに漬ける。
引き上げのタイミングもだいじだ。三日から一週間以内にはかならず引き上げ、酸化を防ぐ。
あとは熟成だ。
さっきあけたのは、四ヶ月熟成させたクズ花酒。
色はうすくすきとおったこはく色。
花の香りがアルコールにとけてむんむんする。この香り、なまの花からはさほど感じられないのだが、アルコールと響き合って出現したものとみえる。
渓流釣りのついでに摘んだフジで、フジ酒を作ったときも、なかなかさわやかにしあがったが、これほどの匂いはなかったように思う。
まるで香水にも似た、クズ花酒の強烈な香りは、危険な感じがする。
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