ガマズミ酒
ガマズミ

奥武蔵にて
ガマズミ酒

オニグルミも落ちてた

 今回あけたのは、1993年のガマズミ酒。上越国境の稲包山で摘んだガマズミだが、ほんの少ししかとれなかったので、全部で一合ほど。

 稲包山はすばらしい大展望とブナ林のかくれた名山だ。西武資本による巨大スキー場開発計画のうわさがあったが、心ある人々の反対運動のおかげで、いまだ静かな山である。

 しかし、赤谷川支流の赤沢源流域は、完全に伐採されてはげ山状態。林道が尾根を越えて四万に向かおうとしている。りっぱなブナ林は赤沢峠から稲包山直下までの間で、かろうじて残っている。

 この時は、めずらしく友人といっしょの山行。キノコとヤマブドウでザックを重くして帰るとき、林縁でいくばくかのガマズミを見つけたのだった。

 ガマズミはほんらい里山に生える低木。初夏に白い花を咲かせ、秋に真っ赤な実をつける。林道はたなどに多いが、実のなる木は少ない。

 ガマズミの果実酒は、漬け込んで一年以内なら、ロゼワインのような美しい色を楽しめるが、ひねてしまうと、味はよくなるが、褪色して褐色となってしまう。味をとるか、色をとるか、悩むところだ。

 今回のは三年もたっているから、色は澄んだ褐色。

 しかし、きりっとした野生の酸味がアルコールとうまい具合に融合しており、これぞ果実酒という味に仕上がっている。

 飲むのは惜しいくらいだが、人間一寸先は闇ということわざもある。

 今年は、南会津の大戸岳登山口近くでガマズミを、貝鳴山でミヤマガマズミを少しずつ摘んだ。
 同じような実だが、登った山がちがうのだから、別々に漬け込んだ。はたして、どういう味がするものやら。

 どちらも、いま、美しい赤色が溶けだしているさなかだ。いつになったら手をつけようかと、考えているうちに、おやおや、三年ものがなくなってしまった。