アンズ酒

 二年おいたアンズ酒をあけてみた。
 色は美しく澄んだこはく色。
 香りがとてもフルーティだ。
 ひと口なめてみたら、アンズのあまい香りが広がった。
 まだ二年しかたたないのに、ずいぶんまろやかな酒になっちゃったものだ。
 おいしい。
 乾燥アンズとこいつをたっぷり入れてケーキを焼けば、すばらしいアンズケーキができるだろう。

 しかし、この酒には、致命的な欠点がある。アンズ酒には、野生の酸味、苦味、エグ味がないのだ。山の実の酒はこんなではない。
 庭に植えたアンズは、ようやくたくさんの実をつけるようになったかと思ったら、カミキリムシにやられて、枯れてしまった。今、飲んでいるのは、その形見の酒だ。
 桃色のアンズの花は可憐だが、毒がなさすぎる。そこが私には、少々もの足りない。
 こんな酒では、酔えない。