食べものと身体

山下惣一『直売所だより』

 佐賀県の海沿いで水稲・みかんなどを作っている農業者によるエッセイ。

 天候や鳥獣の害はあきらめざるを得ないが、自動車産業や政治屋かウマイ汁を吸うことの代償に、農業がつぶされるというのは、あまりに理不尽である。

村井米子『マタギ食伝』

 戦前から戦後にかけて各地の山を歩かれた著者による、山の食に関する記録。

 ことさら目新しい内容ではないが、山案内の人や職業的な猟師からの見聞や実験談なので、それだけリアルに感じる。

さとうち藍『ふるさと野菜礼賛 』

 各地のいわゆる「伝統野菜」の周辺を取材したルポ。

 栽培農家や野菜そのものだけでなく、例えば豆腐屋のような加工業者や種苗店・地域の食材にこだわったレストランのように、伝統野菜が存続するうえで欠かせない人々からも取材している。

 かつて農林中金や全農の指導者であり、のちには有機農業運動の草分け的存在となった一楽照雄氏の語録のアンソロジー。

安田節子『自殺する種子』

 世界の食がどうなっており、「日本」の食はどのような方向に向かっているかをまとめた本。

 肉や牛乳に関する記述も多いが、まずは表題にある、農作物種子の現状について、しっかり読むべきだと思った。

稲垣栄洋『雑草の成功戦略』

 いわゆる雑草の生態についての、肩のこらないエッセイ集。

増田昭子『雑穀を旅する』

 列島において一般的な雑穀は、キビ・アワ・ヒエの三種類だろう。

 これら以外にソバ・タカキビなども古くから作られているが、ソバはあまりにもメジャーだし、タカキビは、どこでも栽培されていたわけではなさそうだ。

 三種類の中で、キビは後発の穀物なのか、『古事記』や『日本書紀』の「五穀」に入っていない。

市川健夫他『地域を照らす伝統作物』

 伝統作物とは、各作物における、それぞれの地域独特の品種のことである。

鹿野政直『健康観にみる近代』

 近現代の日本で、「健康」がどのように位置づけられてきたかを検証した本。

 著者は、近代史を教えていただいた先生の一人なので、一年間の講義を受けているような感覚で読んでしまう。

小泉武夫『発酵は力なり』

 たいへん多くの著書を持つ醸造学・発酵学者による、発酵食についての概説。
 発酵食についての啓蒙書でもあるらしく、文章にめりはりがないのが気になりはしたが、内容はとても面白い。

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