近世史

青木美智男『小林一茶』

 文化文政期・天保期の歴史の中に一茶を位置づけようとした書。

 前半はキリスト教の禁教の経緯、後半は民衆と寺社の関わりについての具体例を示した書だが、前半部分と後半部分とがどのような論理的脈絡でつながっているのか、よくわからなかった。

笹本正治『武田信玄』

 武田信玄の生涯と事績についての歴史学的な概説書。

 伝説的な部分の大きい信玄像を、より事実に即したものへと修正しようとする意図が感じられる。

斉藤洋一『身分差別社会の現実』

 列島における賤民身分に関する研究の到達点をわかりやすく解説した書。

 本書のテーマは賤民身分の起源や実態についてだが、身分制度そのものについての記述も参考になる。

『山本勘助』

 「山本勘助と彼の周辺に関するあれこれをまとめた書。

北島万次『秀吉の朝鮮侵略』

 文禄・慶長の役(朝鮮側でいう壬辰倭乱)に関する概説。

 この戦争については、藤木久志『日本の歴史15 織田・豊臣政権』(小学館 1975)に、要点がまとめられていたと記憶する。

 本書は、朝鮮側の史料を駆使して、主として戦闘の経過をやや詳細にまとめている。

吉田ゆり子『兵と農の分離』

 兵農分離は、近世史を理解する上での前提条件であり、近世国家・社会は兵農分離によって形成されたと言ってもよい。

 自分の理解は、1950年代に書かれた著名な論文の域を出ていないのだが、基本的には、幕藩制国家の成立と前後して、土豪層は下級武士か草分け百姓のいずれかの道を歩むことになり、一方で彼らに従属していた人々は、時間をかけて小農として自立していったというものだった。

山本英二『慶安の触書は出されたか』

 ほとんどの歴史の教科書に出てくる、いわゆる「慶安の触書」と題された禁令の周辺に関する論考。

 この禁令が、多くの参考書や史料集に掲載されており、大学入試にも出題されている史料なだけに、これが実在しなかったことを実証した本書は、興味深い。

 近世の村人たちの家族や人生がどのようなものだったのかを概説した本。
 これも類書が少ないので、助かる本である。

水本邦彦『草山の語る近世』

 主として近世の村における採草地の意味についての概説書。
 同様の書が見当たらないので、ありがたい本である。

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