堤未果『日本が売られる』

 「規制緩和」の正体はなんだったのかを、詳細に明らかにした本。

 第二次安倍政権になって以降、「規制緩和」の流れが一気に加速した。
 列島民は、為政者が意図して生活を破壊するとは思っていない。
 為政者によもや「悪気」はなかろうという、素朴な信頼感は、いずれ手ひどく裏切られる。

 なぜなら為政者は、列島民の代表をおそらくは自任しておらず、自分を多国籍資本の手先だと思っているだろうから。
 民の代表たるべき為政者がなぜ、多国籍資本の手先として行動するのか。
 個人により程度の差はあれ、多国籍資本及びその代理者が、ある程度の金銭欲と名誉欲を満たしてくれるからである。

 本書には、為政者たちがこの間、多国籍資本に売り渡したものが詳細に記されている。
 水、土地、種子、健康、教育などなど。
 富も名誉も欲しない列島民が、唯一の願いとして息災に暮らし続けていく上で最低限必要なすべてが、売られようとしている。

 これでも怒りを覚えないならば、どうやっても救われない。

(ISBN978-4-344-98518-6 C0295 \860E 2018,10 幻冬舎新書 2020,2,3 読了)