阿部岳『ルポ沖縄 国家の暴力』

 沖縄県東村高江において、ヘリパッドがどのようにして建設されたかの記録。

 「日本」が法治国家であるとか、民主主義が機能しているとかのたまう人は、この本に記録されている事実を見れば、それが虚構に過ぎないことが理解できるだろう。

 「法」は民を縛る目的で作られており、警察は安穏に暮らそうとする民を黙らせ、排除する役割を果たす。
 織田信長は、言うとおりにならない一向門徒を皆殺しにしたが、この「国」の治者は、できるものならそうしたいと思っているだろう。
 一向一揆の時代に、治者は民を「土民」と呼んだが、今は「土人」と呼ぶ。

 「国民」が主権者であるという言説は嘘八百である。
 ではアメリカ政府が「日本」政府を使嗾してこのような暴挙をなしているのかといえば、それも皮相な見方だ。
 アメリカ政府のパトロンである、武器産業など多国籍資本が、「日本」の真の主権者である。

 それを列島民がどう思うか、が問題である。

(ISBN978-4-02-262000-2 C0195 \740E 2020,1,30 朝日文庫 2020,2,3 読了)