宮田律『現代イスラムの潮流』

 イスラム教の教義や信仰について、わかりやすく解説した本。

 2001年6月初版なので、「同時多発テロ」より前に出た本だが、現代イスラムについてここで語られている内容に修正は必要ないと思う。

 イスラムの国々は、欧米流の近代化を実現しなかった。
 アジアの非イスラム国もそうだが、「日本」は欧米化をめざし、東南アジア・東アジアの多くは欧米・「日本」帝国主義の餌食になったことによって欧米流近代化の道を絶たれたが、今着々と独自の近代化を進めている。

 イスラムもまた欧米帝国主義に侵食されたのだが、アジア諸国との違いの一つは、彼らが宗教的アイデンティティを大事にする人々である点だろう。

 イスラムの教義は弱肉強食を否定する。
 欧米のバックボーンであるキリスト教もそのはずだが、欧米的価値観はダブルスタンダードを露骨に肯定する。
 イスラムやキリスト教が教祖の言動を実践するなら、トラブルは起き得ない。

 まずは理解が第一である。

(ISBN4-08-720096-5 C0214 \660E 集英社新書 2019,10,16 読了)