川上未映子『ヘヴン』

 壮絶ないじめを受けている男女中学生の心の交流を描いた小説。

 と思ったのだが、最後にかなり陰惨と言える結末を迎える。

 苦しい毎日を送りながらも、クラスメートの二人は、自分たちがおかれている境遇を、懸命に解釈しようとし、お互いがどんな存在なのか理解しようとしていた。

 そこには中学生らしいピュアな恋情も、垣間見える。

 いじめに加わる同級生の、乾いた、観念的な人間感も語られる。

 そこに流れるリアルに、読者は共感しうるだろう。

 しかし、小説だからといって、物語を荒唐無稽に展開する必要はないのではないか。
 荒唐無稽な中に現実以上のリアリティを描くのが文学世界だろう。

 締切が近くなっちゃったからこんな結末になったのかとさえ、思ってしまう。

(ISBN978-4-06-2777246-4 C0193 \552E 講談社文庫 2019,4,22 読了)