安部龍太郎『戦国の山城をゆく』

 戦国時代の山城紀行。歴史学的な考察した書ではない。

 戦国時代のかなりあとまで、砦(城)は山上に築かれた。
 秩父地方にも、城跡が多い。
 平地に巨大な堀を掘削して城を築くようになったのは、戦国時代最末期から江戸時代にかけてである。

 サブタイトルが「信長や秀吉に滅ぼされた世界」とあるように、強大な戦国大名が登場する直前まで、小世界を支配した地侍・国人たちが山城の主だった。
 彼ら地侍・国人たちは、戦国大名に反抗して滅ぼされるか、家臣団に組み込まれることになった。

 だから、山城に残っている歴史の多くが敗者の歴史であり、悲しい歴史である。

 地域に残る口伝は、滅ぼされた方に同情的である。
 彼らは地域の小支配者だったが、地域の小リーダーでもあったのだろう。

 彼らは文献を残さなかったから、教科書はもちろん、歴史書にもほとんど出てこない。
 そこには、じつに面白い歴史があったはずなのだが。

(ISBN978-4-06-258664-1 C0321 \1550E 2017,10 集英社新書 2019,3,20 読了)

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