岡百合子『中・高校生のための朝鮮・韓国の歴史』

 やさしく書かれた朝鮮半島史。

 朝鮮半島の近現代史については何冊か読んだので、朝鮮半島の古代史についてもっと詳しく知りたかった。

 古代の「日本史」が存在し得ないのと同様に、「朝鮮」という国家が存在しないのだから、古代「朝鮮史」も存在しない。
 東アジア地域(中国東北部・朝鮮半島・日本列島)には常に、いくつかの国家が対立・提携しつつ、成立しては消滅していた。

 この時代、個々の国家は内部に個人・階級対立を抱えつつ、中国との関係の中で、自国を位置づけようとしていた。
 俯瞰してみると、それぞれの国家同士は無関係のように見えて、似たような社会を形成させていったことがうかがえる。
 現在の国家の枠組みは、それらの古代諸国家を理解する上での偏見になるから、なるべく無視したほうが全体が理解しやすかろう。

 半島の詳細な歴史を理解するには、本書では不足と思われる。
 伽耶連合国と倭の関係は、列島における古代国家成立の鍵をなす問題と思うが、詳細には明らかになっていないらしく、高校教科書は、その点を記述していない。

(ISBN4-582-76442-8 C0322 \1100E 2002,8 平凡社ライブラリー 2018,3,30 読了)