羽根田治『ドキュメント単独行遭難』

 単独登山での遭難事故のケーススタディ。

 とりあえず、慎重に登山しているつもりである。

 日帰りの場合でも携行すべき、雨具・ツェルト・非常食・ヘッドランプのたぐいは常時、ザックに入っている。
 地形図は最近、国土地理院が、ネットで提供しているものをプリントしている。
 GPSレシーバと予備電池も携行している。
 岩場の通過が予想される場合には、シットハーネスと細引き(6ミリ・20メートル)も持っていく。
 最も必要なのは体力だと思うが、ジョギング・筋トレなど、多少のトレーニングも行っている。

 道迷いやシャリバテで行動不能にならないための最低限の準備はしていると思う。
 800回以上登山に出かけているが、遭難の範疇に入るほどの状況に陥ったことはない。

 今まで無事だったから今後も大丈夫だなどとは思っていない。
 山は、察知困難な危険に満ちている。
 自分の危険察知能力を過信してはいけない。

 本書を一読して、これは危ないと思ったのは、転滑落だ。
 もちろん慎重に歩くのだが、何人にも「絶対」ということはあり得ない。

 転滑落により行動不能になった場合には、救援を求めねばならない。
 救援を求めたときに必要になるのが、登山届である。

 じつは、自分が単独行で登山する場合、登山届を出さないことが多い。

 団体登山で山に行く場合は、約1ヶ月前に計画を立てるから、書面による登山届を必ず提出している。
 単独の場合、直前になって山に行く気になることもあるから、書面による届の提出は難しい。

 ネット経由で登山届が出せるコンパスというサイトもある。
 よくできているとは思うが、ここは基本的にスマートフォンやパソコンでアクセスすることを前提に作られており、携帯電話からでは下山届が出せない。
 下山届が出されなければ時間の経過とともに自動的に「遭難」扱いになることになっているから、携帯電話しか持っていない自分など、大急ぎで帰宅してパソコンから下山報告をしなければならない。
 下山後、温泉になど入っている場合ではないし、遠隔地に登山に出かけだら、下山報告がかなり遅くなることもある。
 これでは、恐ろしくて使えない。

 単独での怪我の場合、セルフレスキューは難しい。
 さしあたりは慎重に行くしかないが、なんとかならないかと思っている。

(ISBN978-4-635-04829-3 C0175 \800E 2016,12 ヤマケイ文庫 2018,3,22 読了)