五味川純平『ガダルカナル』

 ガ島作戦の一部始終を記述している。
 朽ちていった命への愛惜と、その場限りの作戦で命を消耗させた指揮官・参謀への憤りに満ちている。

 ガ島作戦の問題点は、概ね以下の通りだと思われる。

1 ガ島の戦略的重要さにもかかわらず、作戦をポートモレスビー攻略と同時並行で実行しようとした。その結果、兵力を小出しに投入することになり、いたずらに武器弾薬と人命を消耗した。その背景には、アメリカ軍の兵力に対する軽視・思い込みがあり、理にかなわぬ作戦が強行された。

2 アメリカに制空権・制海権を奪われた状態での作戦となったため、食糧・弾薬・薬品・人員の補給がままならず、大量の餓死者・戦病死者をだした。

3 地図もなしに密林内を武器・食糧を背負っての行軍を強いられ、通信機器も破壊されたため、軍全体が統一的に作戦を実施することができなかった。

 作戦の立案者・命令者の責任を追及すべきだろう。

(ISBN4-16-711510-8 C0193 \460E 1983,8 文春文庫 2018,3,8 読了)