編集委員会編『竹橋事件の兵士たち』

 竹橋事件の参加者掘り起こしを中心として、同事件についてまとめた論集を再読。

 『火は我が胸中にあり』より新しい本だが、事件そのものの研究としては、同書より大幅に前進しているようには見えない。
 史料的な制約は、いかんともしがたいのだろう。

 中沢市朗氏の「秩父路の兵士たち」は、秩父地方から事件に参加し処刑された浅見綾次郎・田島盛介・高橋小三郎の三名について掘り起こしており、浅見綾次郎については軍服姿の写真が掲載されている。
 秩父事件の際に、政府軍が来攻したら「自由党の兵は汝らの父、兄であるから、銃を天兵に向けよ」と説得すると言った人がいた。
 明治11年の「日本」軍はまだ、人民の軍隊である可能性をもっており、それは一般民衆の認識でもあったのである。

 藤原彰氏は「成立期における日本軍隊の特質」で、人民の軍隊を天皇の軍隊へ変えていくために政府がどのような兵士教育を行ったかを説いている。

 竹橋事件の本質については、おそらく解明不可能だろう。
 しかし、同事件が天皇の軍隊成立の転換点となった点については、間違いないと思われる。

(1979,5 徳間書店 2018,2,1 読了)