伊藤政徳『連合艦隊の最後』

 帝国海軍が太平洋戦争をいかに戦ったかを分析的に描いた書。
 主として作戦面での問題点を分析している。

 そのような点で、筆致は『太平洋海戦史』と似ているが、旧将官による著作だったそちらより、新聞記者だった本書のほうが詳細に書かれている。

 戦争全体を俯瞰すれば、ミッドウェー海戦以降はほぼ負け戦だったのだが、部分的に挽回可能な勝機もなくはなかった。
 にもかかわらず惨敗に次ぐ惨敗となった最大の原因は、長期的な戦略に欠けていたことだった。

 著者は、太平洋戦争のほぼ全局面における個々の敗戦の原因を、細かく分析する。
 戦闘に参加した将兵の勇気・忠誠心や、当時の技術力を賞賛しつつ、戦争意図に関する批判は皆無である。
 これが「日本」人の平均的な太平洋戦争観かもしれない。

 最後に、帝国海軍という組織の問題点についても若干考察されているが、それはまだ十分とは言えそうにない。

(1974,11 角川文庫 2017,2,20 読了)