島村英紀『火山入門』

 日本列島の火山についての概説書。コンパクトでとてもわかりやすい。

 この列島が四つのプレートの運動によって作られた(というか作られつつある)ということに、考えの浅い人は思いを致さない。
 同様に、この列島が火山列島であるという「不都合な真実」にも関心を持たない。
 絶対にあり得ないにも関わらず、どうして「原発は安全だ」とか言えるのか。頭がどうかしているとしか、思えない。

 しかし、この列島には数多くの危険な火山が集まっている。
 そしていつか、破局的な巨大噴火が起きることも、確実である。

 破局的巨大噴火(カルデラ噴火)が起きたときの予想犠牲者数は、1億2千万人。すなわち、列島民全滅である。
 そうならないためにどうすればいいか、考えるのは今だ。

 破局的でない噴火なら、ほぼ毎年のように起きている。
 列島が全滅する規模でなくても、火山の噴火は甚大な被害が出る。

 噴火の予知はほとんど不可能だし、たとえ予知できたとしても、インフラの壊滅は避けられない。
 そうならないための国土づくりが求められている。

 政府の一部で「国土強靭化」を叫ぶ人もいる。
 国土をいくら強靭化しても、火山の噴火を防ぐことはできない。
 被害を最小限に抑えるためのハード的な準備は必要として、いかに逃げ道を確保するかや、復旧の手立てをどうするかなどに、十分な備えをすることが、最も大切だろう。

(ISBN978-4-14-088461-4 C02401 \740E 2015,5 NHK出版新書 2017,2,2 読了)

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