竹本修三『日本の原発と地震・津波・火山』

 日本列島で原発を稼働することの危険性について、地球物理学者である著者が多面的に考察している。

 この列島は、地球の造山活動の産物である。
 造山活動がなければ、この列島は海底だったはずだ。
 地震や火山活動は造山活動の一環だから、それらなくして列島は存在しなかったという言い方もできる。

 地震や火山活動を予測することができればよいのだろうが、それが人智によって解明されることは、ありえない。
 地球の時間と人間の時間を、同じスケールで考えること自体、無意味である。

 かといって、不可知論に陥る必要はない。
 地球の時間でものごとを考えればよいのである。
 とある活断層が動く確率が20000分の1と算出されたとすると、知恵の浅い人間は、それを限りなくゼロに近いと受け止める。
 壊滅的な事態が到来すればオシマイなのだから、少しよく考えれば、20000分の1は1に等しいということがわかりそうなものだ。

 プレートの移動に伴う巨大地震や活断層の破断による大地震は、地球の時間で考えれば、この列島では、ごく日常的に発生する。
 しかし、そういうものだと思って、暮らしていけばよいのである。

 火山活動もしかり。
 これについては、多少の予知が可能だから、観測に手を尽くすとともに、困難な事態への備えを怠らないことが必要だろう。

 「巨大カルデラ噴火」については、全く知らなかった。
 西日本の縄文文明を壊滅させた(かも知れない)規模の大噴火が発生したら、列島での人の生存が厳しくなる可能性がある。
 カネの亡者は相変わらず、「その可能性は少ない」という呪文を唱え続けており、一部の科学者がそれにお墨付きを与え、政治家と官僚がお墨付きをかざして、神話を吹聴している。

 もっと長い時間スケールでものごとを考える必要があるのだろう。

(ISBN978-4-905245-08-7 C0040 \1000E 2004,3 マニュアルハウス 2016,6,22 読了)