草川俊『雑穀博物誌』

 稲と麦類以外の、12種類の穀物・豆類に関する雑学的な本。

 ここで語られている作物のうち、稗だけは作ったことがない。また、ここには登場しないが、シコクビエを栽培したことがある。

 コメを作るのは雑穀よりは楽だと思われるが、それは米作りに特化した農業機械が比較的安価に提供されている(それでも高い)からであって、コメ作りの作業をすべて人間が担うとなると、とんでもない重労働になる。
 その点、雑穀類を作るのに、鳥害対策以外に、さほどの労苦は必要でない。

 また、生育期に大量の水と高温を必要とするコメと異なり、雑穀は旱害や温度変化にもさほどまで敏感とはいえない。

 江戸時代後半に天候不順による飢饉が発生したが、おそらく雑穀さえ、ろくに収穫できなかったのだろうから、相当の冷害があったものと考えるしかない。

 稗以外の雑穀を食してみた限りでは、決して不味いものではない。
 ただ、食せるまでに調整するのが、じつに困難である。
 コメ作りにおける脱穀機・籾摺り機・精穀機の類があれば容易なのだろうが、そのような機械は殆ど存在しない。

 コメは特殊極上の穀物であるが、雑穀を食したくないとは思わない。
 コメが手に入ればコメを、雑穀があれば雑穀を食して、生きていければ十分だ。

 当地には平坦な耕地がほとんどなく、水田を築くことができないところも多い。
 このようなところでは、麦・雑穀文明が開花するのが自然なのだと思う。

 雑穀がコメに勝る部分だって決してなくはないはずだ。
 そんなわけで、菜園には菜だけでなく、穀類・豆類も手に負える範囲で作ろうと思っている。

(ISBN4-8188-0026-0 C0095 \1200E 1984,6 日本経済評論社 2015,12,10 読了)