加藤幹敏・原真『ドキュメント速攻登山』

 1970代から1980年代にかけてのヒマラヤ登山は、「無酸素」とか「アルパインスタイル」とかに価値があるという風潮が強かったらしい。

 著者らもその流れに乗って、シシャパンマを三日で登るという計画に挑戦する。

 一読して、著者らの視野の偏狭さが印象的だ。

 著者らには、山頂しか見えていないし、三日(ないし数日)で登山を完了することにしか、意識をおいていないように思える。

 「日本の山とヒマラヤとは違う」かもしれないが、著者らの山の登り方は、あまりにも貧しすぎると思う。

 このパーティは、ベースキャンプへのアプローチで世話になった運転手を、対等の人間とは考えていないし、山の中で不要な装備・ゴミを投棄するのは当然と考えている(これは当時のどの登山隊にも共通だったらしい)。

 読んで面白い現代ヒマラヤ登山記を読んでみたいものである。

(ISBN4-8083-0218-7 C0075 \2200E 1984,8 東京新聞出版局 2014,7,16 読了)