坪井善明『ヴェトナム新時代』

 中国とともに、「社会主義市場経済」を指向するベトナムの現状を分析した書。

 中国に続いて、ベトナムも1986年から市場経済化し始め、経済的には、着実な「成長」を遂げつつある。

 この国の経済の行方については、「社会主義市場経済」が成立しうるかという、中国と同じ問題が横たわる。

 政治についても同様で、共産党支配の弊害は、いずれ破綻せざるを得ないだろう。

 格差社会化や官僚支配など、中国で顕在化したと同じ問題が起きつつあるベトナムが、中国化するかどうかは、わからない。
 ベトナムはそもそも、中国よりさらに貧しい国だったし、ベトナム戦争による被害は今なお進行中だし、毛沢東のような暴君は存在しなかったし、天安門事件を起こしてはいない。

 ホーチミンがめざした「独立と自由」のうち、独立は達成された。
 次なる課題は、「自由」の実現ではないか。

(ISBN4-00-431145-4 C0236 P820E 2008,8 岩波新書 2014,7,16 読了)