西川恵与市『土佐のかつお一本釣り』

 明治から大正、昭和の戦後にかけて、「かつお一本釣り」という漁法がどのように変遷してきたか、あるいはこの漁法の勘どころは何かについての、当事者による記録。

 編者がいるとはいえ、原著者による詳細な挿図があって、わかりやすい。

 漁業だから、少ない時間・労力でいかに多くのかつおを釣るかが、唯一最大のテーマである。
 かつては餌釣りオンリーで、近年は擬似餌が基本とのことだが、1分間に30から40匹を釣りあげるというのは、神業である。

 かつおは、群が餌づいたときに一気に釣らなければならない。
 著者によると、竿の回転によって釣り鉤をはずせなくては、仕事にならないのだ。

 群を見つけなければ釣りにならないのだが、漁師たちは、潮の流れや海水表面の変化や海鳥の飛び方などを読んでかつおを釣るから、機械に依存しても、仕事にならない。

 これは、『にっぽんの漁師』にも語られていたことだが、本書の著者も、資源量の維持が焦眉の課題と考えておられる。

 かつおの場合、巻網漁によってサカナを一網打尽にすることによって、生息数が激減するのではないかと、著者は憂えている。

 かつおは、北太平洋を代表するサカナである。
 三陸沖も、かつおの漁場である。
 原発から漏れている放射能汚染水問題も、心配される。

(ISBN4-582-82369-6 C0062 \2200E 1989,2 平凡社 2013,9,10 読了)