大田昌秀『沖縄 平和の礎』

> 著者の県知事在職中の講演集。

 学究だった著者の専門はマスコミ論とのことだが、著者はそれとは別に、「平和学」の体系化を考えておられたようだ。

 この講演集は、著者による「平和学概論」だといえる。

 平和学が人間にとって有効な学であることは言うまでもない。
 市場経済にとってそんなものは無意味だと、一部の資本は主張するかもしれないが、はたしてそうなのかを含めて、研究の対象にできよう。

 平和を国是にするというならば、大学の一般教養課程で平和学概論を必修にするとか、中学や高校の現在の社会科を再編成して平和学を「国民」の共通教養化するくらいのことは、やってもよいだろう。

 原発が破滅的な事態に陥ったら「日本」だけでなく、世界をも、取返しのつかない危機に陥れることになる。
 戦争は、核戦争でない限り、取返しのつかない危機をもたらすとまでは言えないかもしれない。

 しかし琉球は、沖縄戦(とその後の占領期以降)のために、ありとあらゆる価値あるものを失った。

 本書の内容を語った当時の著者は政治家だったから、理念だけ唱えてるわけにはいかなかったが、本書には著者の言動の土台にある平和へむけた信念の、バックボーンが語られている。

(ISBN4-00-430477-6 C0231 P650E 1996,12 岩波新書 2013,8,30 読了)