秩父事件の顛末を描いた小説。
主人公が竹橋事件・加波山事件・秩父事件の全てにかかわったという、どう考えても現実的でない設定に、読書欲が失せる。
秩父事件ほど史料の多い歴史的事件を作品化するには、トルストイやショーロホフ並みの壮大な構想力が必要なのではないか。
主人公を通して明治という時代を描こうとしているのかもしれないが、安易な現代人の想像力を遥かに超えるドラマティックな史実の前では、本書程度の潤色に、なんの心打つものもない。
従って、作品としてそもそも、破綻している。
著者によれば、主人公はこのあと続編で、足尾鉱毒事件に関わっていく予定らしいが、無理の上に無理を重ねる話だと思う。