米川正利『北八ヶ岳 黒百合ヒュッテ』

 中山峠をはさんで、しらびそ小屋の反対側(諏訪側)にある黒百合ヒュッテ主人のエッセイ。

 この本にも、昭和20から30年代の北八ヶ岳一帯の森林伐採の状況が記されている。

 稲子湯からミドリ池への軌道については、やや詳しく記されていて、ここのトロッコに原動機はなく、空荷になる登りでは馬が引き、木材を積載した下りでは、人がブレーキをかけながら惰性で動いたようだ。
 機関車に引かれた奥秩父の軌道と比べると、こちらはカーブが激しく、運行にかなり技術を要したのではないかと想像される。

 黒百合ヒュッテには、20年ほど前の暮れに泊まったことがあるが、記憶はあまりない。
 美しいお花畑だという草原前にあるテント場では、2010年の夏に幕営した。

 ずっと以前に尾根一つ越えたところにあるオーレン小屋前を真夏に通りかかったことがある。
 そこには、クロユリ・クルマユリを始め、各種草原の花が咲き乱れており、美しいところだった。

 現在の黒百合ヒュッテ周辺には、花が非常に少なく、草原はネットで覆われている。
 おそらく、みんな鹿に食われてしまったのだろう。

 黒百合平のお花畑が復活するのはまだずいぶん先になるだろうが、いつかクロユリの咲き乱れる黒百合平を訪れてみたいものである。

(ISBN4-635-17056-X C0075 P1400E 2004,9 山と渓谷社 2012,9,23 読了)