白石浩之『旧石器時代の社会と文化』

 旧石器時代とは、更新世(温暖化が進行する約16000年以前)における無土器文化をさすらしい。

 世界史的には、約13万年前以前を前期、約35000年前以前を中期、それ以降約16000年前までを前期旧石器時代と呼ぶが、日本列島における前期・中期の旧石器時代遺跡について、確たることは不明であり、列島における人間の生活痕として確認されているのは、前期旧石器時代以降である。

 列島における石器原料の黒曜石とサヌカイトの産地は、ある程度限定されているので、旧石器時代にも何らかのネットワークが存在したらしい。
 しかしその実態については、まだまだ不詳のようだ。

 出土した地層によって年代が測定できるから、石器の形態や製作技法の変遷なども分析されているが、おおまかな定向変化に関し定説化されているのかどうか、よくわからない印象である。

 本書を読んでいると、旧石器時代人はもともと、肉を常食しており、ある時期以降、魚食を開始したかのような印象を受ける。
 しかし、どう考えても、それはありえない。

 集団が餓死しない程度とはいえ、新鮮な獣肉が継続的に入手できたとはとても考えられない上、縄文時代に堅果食・芋食が一般化することとも論理的に整合しない。
 また、獣類より魚類の方が捕獲しやすいのは当然であり、大型獣を狩猟する知恵や技術を持っていた旧石器時代人が、ある時期まで魚食しなかったということも、ありえないと思う。

 列島における旧石器時代については、わかっていない部分がまだずいぶん多いのだという印象を持った。

(ISBN4-634-54010-X C1321 \800E 2002,5 山川出版社 2012,7,26 読了)